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精子提供・体外受精・人工授精・不妊治療等に関するニュース【2020.7/21】

2020.07.21
精子提供・体外受精・人工授精・不妊治療等に関するニュース【2020.7/21】

こんにちわ。管理者のミライです。
精子提供、体外受精、人工授精・不妊治療に関するニュースをご紹介いたします。

引用:日経BP総合研究所

これが良好な「精子」、判別から抽出までを自動化したワケ

形態や運動性に優れた精子の判別から、抽出までを自動化する「自動精子選別装置」が間もなく登場する。開発しているのは、医療機器系スタートアップの日本医療機器開発機構(JOMDD)と国際医療福祉大学および東京大学の共同研究チームである(関連記事:良好な「精子」を自動選別、装置開発に向けタッグ)。現在は、「2020年中の国内での上市を目指している」(JOMDD 事業開発マネージャーの久保慶治氏)段階だ。

課題は知識や技量、経験などによる「ばらつき」

主に男性側に原因があって妊娠に至らない男性不妊症は、不妊原因の40数%に及ぶと言われている。2016年に公表された厚生労働省の全国調査によると、男性不妊症の原因の約8割が造精機能障害である。

造精機能障害とは、射精した精液中に精子が存在しない無精子症、精子の数が極端に少ない乏精子症、精子の運動性が悪い精子無力症、奇形の精子が多い精子奇形症などを指す。こうした障害を有する男性の精子を受精させるためには、形態や運動性が良好な精子を選別することが非常に重要になるという。

良好な精子を見極めて選別する作業は、胚培養士が担っている。現状は顕微鏡下で目視と手作業で行われており、胚培養士の知識や技量、経験などに依存している部分が大きい。「選別した精子で受精卵ができる確率は3~4割程度とされているが、生殖医療施設によってばらつきがある。特に胚培養士の熟練度、あるいは何人の胚培養士が選別処理するのかで変わってくる」。国際医療福祉大学医学部 高度生殖医療リサーチセンター長の河村和弘氏はこう課題を指摘する。

無精子症の場合は、精巣の組織から直接、精子を採取する「精巣内精子採取術(TESE)」と呼ばれる手術を実施する。ところが、精巣内から精子を採取しようとすると、多くの精細管組織も一緒に採取されるため、その中から良好な精子を見つけ出すのは大変な苦労を伴うという。河村氏は「大海原で漂流している人を見つけるような作業」と表現する。ともすると「10時間も顕微鏡を見続けることになることもある」(同氏)。

そうした河村氏の過去の経験を通して、体外受精に使える良好な精子の選別を胚培養士の熟練度に左右されず、かつ効率的に抽出できないか――。その思いが今回の装置開発につながった。

類似の他の研究との大きな違いは…

開発中の自動精子選別装置は、人工知能(機械学習)を用いて精子の形態や運動性を解析し良好な精子を判別するプログラムと、良好と判断された精子を自動で抽出する装置から成る。日本医療研究開発機構(AMED)の2017年度「成育疾患克服等総合研究事業―BIRTHDAY」に採択され、研究を続けてきた成果がベースになっている。

良好な精子を判別するプログラムは、熟練の胚培養士が判定した良好な精子像を教師データとして、ディープラーニングを組み合わせて機械学習させることでアルゴリズムを構築している。教師データは、国内の生殖医療機関の協力により、現時点では胚培養士が選別した約100人分の精子動画から切り出して使用している

実は、「現在の機械学習による画像認識技術では、熟練した胚培養士の判定データがあれば、良好な精子の判別自体はそれほど難しいことではない」(東京大学 大学院情報理工学系研究科 システム情報学専攻 生体医用マイクロシステム講座 講師の池内真志氏)という。実際、人工知能で良好精子を判別するシステムの開発は、他の研究チームでも行われている。

これに対して今回の装置のポイントは、良好な精子の判別と同時に、その精子のみをリアルタイムに選別・抽出する技術を確立したことにある(図)。選別・抽出には、池内氏が研究テーマとする生体医用マイクロナノマシンの技術を生かした。「5μ~10μmほどの微小な精子1つを、精子自体に負荷をかけることなく吸い取ることが可能なマイクロバルブというデバイスを開発。このマイクロバルブを多数配置することで、精子を判別すると同時に素早く効率的に自動抽出できるようにした」(同氏)。

最終的なゴールは…

今回の装置は、「TESE術者・胚培養士の技量に依存しないTESE治療の標準化にも貢献できる」と河村氏は言う。TESEは、部分麻酔により通常30分~1時間ほどの手術で精子を含む可能性のある精巣の精細管組織の採取を終え、その後に時間をかけて胚培養士が精子を見つけだしていた

「精巣のどの場所で採取すれば精子が見つかるかは、術者の知見と経験に頼っていたところがある。(採取しようとする組織に)精子がいるかどうかAIで瞬時に判断し、術中にリアルタイムに精子を採取できれば、精子を見つけられるまで可能な範囲で手術を続行でき、採取確率も上がるだろう」(河村氏)。

河村氏らは、今回の装置はあくまで最終的なゴールへの入り口だと位置付ける。目指しているのは、実際に選別した精子による受精卵の作成から、妊娠・出産、さらに子どもが発育していくまでを追跡し、選別した精子が良質だったことを根拠づけることだという。

「AIが選別した精子が本当に良好なものなのかは、受精させた卵子による妊娠・出産・発育まで追跡する必要がある。そうしたデータを収集できれば、より信頼性の高い教師データが集積できる」と河村氏。子どもの成長までを見据えた良好な精子選別を目指し、自動精子選別装置の研究開発をさらに発展させていきたいと展望した。