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精子提供・体外受精・人工授精・不妊治療等に関するニュース【2019.8/7】

2019.08.07
精子提供・体外受精・人工授精・不妊治療等に関するニュース【2019.8/7】

こんにちわ。管理者のミライです。
体外受精、人工授精・不妊治療に関するニュースをご紹介いたします。

引用:Yahoo!ニュース

「かけた費用は800万円以上です」不妊治療の高い壁――仕事との両立も難しく

「不妊治療にかけた費用は800万円以上です。それでも子どもを授かれません」。30代の女性はそう悩みを打ち明けた————。「子どもが欲しいのにできない」というカップルは、日本で5.5組に1組になるとされる。体外受精などによる不妊治療は年々増加し、2016年に体外受精で生まれた赤ちゃんは18人に1人にもなる。一方で、不妊治療を受ける際の“壁”も顕著になってきた。高額化が続く治療費、受診が不定期なため仕事との両立が難しくなる女性たち……。仕方なく仕事を辞める人もいる。

「治療費800万円以上。でも赤ちゃんはできません」

東京・多摩地域に住む臨床心理士、久留米あゆみさん(34)=仮名=は、2013年に11歳年上の男性と結婚した。結婚から1年経っても子どもができず、不妊治療を始めた。それから5年が過ぎたのに、子どもを授かっていない。
「この5年間に6カ所の専門病院で治療を受けました。合わせて800万円以上のお金がかかっています。でも、赤ちゃんができるめどは、まだ立っていません。いくらかけたら赤ちゃんができるのか……」
久留米さんはそう話し、「金銭的、精神的に追い詰められている気がします」とも語った。

不妊の原因はさまざまで、男性と女性、それぞれに原因がある。一般の不妊治療では、排卵日前後に性交渉する「タイミング法」と、男性の精液を採取して女性の子宮に直接注入する「人工授精」がある。
それでも妊娠しない場合に行われるのが「体外受精」だ。卵子と精子を体外で受精させ、発育させてから、子宮に戻す。洗浄した精子を卵子の周りにふりかけて受精を促す仕組みである。
ただし、精子の数が少ない場合などには、機器を用いて卵子の中まで精子を注入する「顕微授精」を行う。こうした治療を「生殖補助医療(ART)」と呼ぶ。
久留米さんは、どんな治療を受けたのだろうか。

「人工授精を5回くらい試しましたが、妊娠しなかったので、顕微授精に変えてもらいました。それでもダメだった。別の病院で検査してもらったら『甲状腺に異常があるから妊娠しないのでは』と言われました。でも甲状腺の専門病院で調べてもらったら、『異常はありません』と」
赤ちゃんを諦めていない久留米さんにとって、一番の心配は治療にお金がかかりすぎることだ。
不妊治療は基本的に保険適用対象外のうえ、治療が高度になれば、1周期当たり最低でも30万円以上かかるとされる。久留米さんはそれを10回以上受けた。直接的な治療費だけでなく、薬代や雑費もかなりの額になるという。

「給料だけでは足りない」 公的助成も不十分

体外受精と顕微授精を受けた夫妻に対しては、国の助成金制度がある。妻の年齢が40歳未満の場合、1周期当たり最大で15万円(初回は最大30万円)。通算6回まで受け取りが可能だから、最大で105万円になる。40歳以上、43歳未満になると、通算3回まで。いずれも対象となる夫妻には「年間所得が合計730万円以内」という制限がある。

久留米さんも助成を受けてきた。
「国の助成金のほか、東京都から1周期当たり20万円、地元の自治体から1年ごとに1万円の助成金をもらっています。それでも治療費などがどんどん高くなり、とても夫婦の給料だけでは足りませんでした」
不妊治療の体験を持つ当事者らでつくるNPO法人「Fine」の調査によると、高額な治療費が当事者たちを苦しめている実態がよく分かる。
「不妊治療と経済的負担に関するアンケート」の2018年調査によると、体外受精1周期当たりの平均治療費は「50万円以上」の割合が43%。2010年調査の16%から大きく増加した。同様に「通院開始からの治療費総額」に関する回答を比べると、「300万円未満」がほぼ横ばいなのに対し、「300万円以上」は増加が顕著だった。
このほかにも、不妊治療をしない理由については「経済的な負担が心配」が34%で最も多く、経済的理由で次の段階の治療を断念、延期、躊躇した経験者も54%に達している。Fine理事長の松本亜樹子さんは言う。
「不妊治療ではお金の問題が大きい。国の助成金の所得制限を緩和するか撤廃し、助成金の金額を1周期ごとではなく、総支給額の105万円を自分たちのタイミングに合わせて自由に使えるようにしてほしい。1回ごとに15万円の制限があると、残りの金額を払えない人が大勢います。そうなると、治療を先送りにしなければならないんです」

不妊治療のために会社が休職制度

不妊治療では一般的に、女性の負担が大きい。遠方の専門病院に通う人も多いことなどから、働く女性にとって「不妊治療と仕事の両立」は切実だ。コンテンツ配信業「エムティーアイ」(東京)の常務執行役員、立石優子さん(40)も両立に悩んだ一人だ。

立石さんによると、30歳で結婚した後、3年経っても赤ちゃんを授からず、専門病院で受診することにした。卵巣嚢腫(のうしゅ)が原因かもしれないと言われ、手術。その後、「タイミング法」で妊娠し、大喜びしたという。ところが、母子手帳をもらいに行く直前、病院で「赤ちゃんの心拍が止まっています」と流産を宣告されてしまう。

「流産は相当なショックでした。それでも妊娠成立したことを励みに不妊治療を再開しましたが、やはり授かることはできず、病院から『体外受精が必要。そうじゃないと赤ちゃんはできないでしょう』と言われて……。仕事との両立は難しいと思いました」

退職すべきかどうかを会社に相談すると、引き留められ、立石さんはケガなどの私傷病と同じように扱ってほしいと申し出た。不妊治療を対象とした休職制度がなかったからだ。これに対し、会社側は新制度を作る方向に動き、不妊治療を対象とする半年間の休職制度ができた。期間はその後、最長2年間に延長された。

立石さんは体外受精の治療を始めてから1年3カ月後に妊娠し、赤ちゃんは無事に誕生した。立石さんは言う。
「私は雇用された状態で治療を受けられました。子どもができてもできなくても、そのまま会社に復帰できるという安心感があった。あの休職制度がなかったら、今の自分はありません」

治療6年目で授かった赤ちゃん

東京都に住む野曽原誉枝(やすえ)さん(51)のケースも紹介しよう。

野曽原さんはNECに勤務していた38歳の時、夫(51)と話し合い、不妊治療を始めたという。タイミング法を半年間続けたがうまくいかず、人工授精に切り替え、7回挑戦した。次は体外受精へ。それもうまくいかない。転院して顕微授精に切り替え、ようやく子どもを授かった。

治療を始めて6年目、病院は4カ所目だった。
「会社には不妊治療のことを伝えませんでした。管理職になったばかりで言えなかった。妊娠した時は『私もついにここに来たか』という感じで。妊娠時は既に44歳で、妊娠率がぐんと下がる年齢です。運が良かったんです」

野曽原さん夫妻は所得制限にかかり、国の治療費助成を受けられなかった。会社からは治療ごとに15万円の助成金を5年間もらっていた。

仕事と不妊治療。その関係を野曽原さんはこう考えている。
「企業では、不妊治療を性の問題と捉えている人が多いんです。そうなると、第三者が立ち入る問題ではなくなる。不妊治療を個人の問題ではなく、社会全体の問題として考えるべきだと思うんです。不妊治療を続けるために仕事を辞めることは、企業や社会にとっても大きな損失ではないでしょうか。不妊の人たちはマイノリティーではありません。サイレント・マジョリティーなんです」

では、不妊治療患者の全体像はどうなっているのだろうか。

順天堂大学の公衆衛生学講座・産婦人科学講座による実態調査の結果が今年5月、日本産業衛生学会で発表された。調査期間は昨年8〜12月。東京都と群馬県、福岡県にある四つの専門病院が協力し、1727人の女性外来患者を対象にした。不妊治療の外来をフィールドとした大規模な疫学研究はわが国で初めてという。

それによると、体外受精開始時の平均年齢は36.5歳(パートナーの男性の平均年齢は39.3歳)。治療開始時に働いていた女性は79.2%いた。62.8%は治療を始めた後も働いていたという。治療開始を契機に離職した女性は16.3%。「不妊治療と仕事の両立は困難」と考えている女性は、83%という高い割合になった。費用面では、不妊治療中の女性の半数以上が100万円以上の治療費を支払っている実態も明らかになった。

調査した同大学医学部の遠藤源樹准教授は「不妊治療の開始後に多くの女性が離職した最大の理由は、急に仕事を休んで病院に行かなければならなくなるからです」と分析する。

「女性の平均初婚年齢は約30歳ですが、結婚して数年経って不妊に気づく。そして病院に行って、35歳を過ぎると妊娠率がぐんと下がると知らされ、『もっと早く不妊治療を始めるべきだった』と後悔する。そういう人が少なくありません。不妊治療を受けている女性の約8割は働いているのに、そういう人たちをサポートする社会の仕組みが不十分です。企業や行政は速やかに対策を取ってほしい。それと、学校での教育も大事ですが、こうしたことを職場でも女性にきちんと教えることが必要ではないでしょうか」

「母にだけは初孫を抱かせてあげたい」

不妊治療専門病院の「ファティリティクリニック東京」はJRの渋谷駅と恵比寿駅の中間くらいの場所にある。

小田原靖院長に会うと、「妊娠率はどうしても女性の年齢と関係してきます」と言い、こう続けた。
「患者さんが35歳までなら、タイミング法から順番に段階を上がっていくのもいいが、35歳を過ぎたら最初から体外受精を考えたほうが治療のデザインも描きやすい。最終的なゴールは赤ちゃんを得ることですから」

日本産科婦人科学会によると、不妊治療の最も一般的な方法である体外受精によって生まれた赤ちゃんは、2016年に5万4110人となり、出生総数の「18人に1人」という割合だった。2000年には「97人に1人」だったから、体外受精がいかに広がったかが分かる。

一方、国際生殖補助医療監視委員会のデータによると、2010年に日本で行われた「生殖補助医療(ART)」は約24万件。2位だった米国の約17万件を大きく引き離し、対象の60カ国中で最も多かった。ただし、ARTによる採卵1回当たりの出生率は日本が最下位だったという。

元NEC社員で、前出の野曽原さんは不妊治療を始めて6年目、44歳の時に男の赤ちゃんを授かった。出産の3カ月前に会社を辞め、今も常勤の仕事に就いていない。男の子はもう6歳になり、この春から小学生になった。毎日、元気に学校に通っているという。

冒頭で紹介した久留米さんは、臨床心理士の仕事を続けながら不妊治療を続けていたが、今年4月、とうとうその職場を辞めてしまった。通勤に1時間半。残業も多く、治療と仕事を両立させるには体力的な負担が大きいと考えたからだ。

転職先は自宅のすぐ近く。秋になれば、治療を再開するつもりだ。久留米さんはこう言った。
「不妊治療を始めたのは、糖尿病を患っていた父が元気なうちに孫を見せてやりたいと思ったからです。でも、2年前に亡くなり、孫を見せてやれなかった。母はいま68歳。母にだけは初孫を抱かせてあげたい」