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着床前検査、来年にも研究拡大へ 日本産科婦人科学会
体外受精した受精卵の全染色体を検査し、異常のないものだけを母胎に戻す「着床前検査」を巡り、日本産科婦人科学会(日産婦)は16日、昨年2月から続ける臨床研究の結果を東京都内で開いたシンポジウムで発表した。来年、参加人数や施設を増やした臨床研究の本格実施移行を検討する方針を明らかにしたが、有効性の根拠となるデータは十分には示されなかった。
着床前検査は、染色体異常によるダウン症などの受精卵段階での排除につながる懸念から「命の選別」との批判があり、日産婦はこれまで指針で禁止し、国内で実施する一部の民間クリニックを処分してきた。だが、流産の防止に海外で使われており、日本人での効果を調べる臨床研究に踏み切った。
対象は35~42歳で、体外受精で3回以上妊娠しなかった女性と、流産を2回以上した女性計85人。データがある77人のうち38人が受精卵を子宮に移植でき、27人が妊娠、3人が流産した。流産率は11%で、不妊治療経験者の29%(日産婦の統計)と比べ「改善された」との見解を示した。だが、研究が遅れ、比較すべき対象である検査しなかった人のデータや、本来の研究目的である出産率のデータは今後示すとした。
今回は予備研究の位置付けで、苛原(いらはら)稔・倫理委員長(徳島大教授)は「一般診療には程遠いが、臨床研究の形で日本への導入の仕方を検討したい。来年3月ごろにステージを変えたい」と述べた。【千葉紀和】