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精子提供・体外受精・人工授精・不妊治療等に関するニュース【2019.9/9】

2019.09.09
精子提供・体外受精・人工授精・不妊治療等に関するニュース【2019.9/9】

こんにちわ。管理者のミライです。
体外受精、人工授精・不妊治療に関するニュースをご紹介いたします。

引用:Forbesjapan

世界最大の精子バンク「クリオス」 100カ国提供までの成功の軌跡

「1981年のある日、奇妙な夢を見たんだ。どういうわけかその夢を見てから、精子にのめり込んだんだ」

世界最大の精子バンクであるクリオスの創業者、オーレ・スコウはそう語った。彼のスーツの襟には、精子の形をしたブローチがつけられていた。100カ国以上の人たちに精子や卵子を届けるクリオスは、これまでに数万人もの出産をサポートしてきた。

その特異な一大ビジネスを築き上げたスコウに、彼のビジネスが成功した理由を聞いた。

27歳の時に見た夢から全てが変わった

1981年、スコウは大学院でビジネスを学ぶ普通の学生だった。今でも思い出せるという奇妙な夢を見た日から、彼は「精子」の虜になった。夢には凍結された精子の絵が出てきたのだという。

当時、彼はその夢を思い出しながら、図書館に通って「精子」にまつわる本を全て読み込んだ。精子の妊孕性(にんようせい)や不妊治療、低温生物学など、当時は恥ずかしくて誰にも言えず、昼はビジネスを学びながら、夜は「精子」の勉強に没頭する生活を続けた。

最初につくった精子に関してのビジネスプランは400ページにも及んだ。専門家の医者にそのビジネスプラン持って行くと、あまりにもスコウが精子に精通していたため、驚かれた。

そのとき彼が考えたドナー精子提供のビジネスはすぐには始められなかったが、幸運なことにデンマークで初めて開業した私立病院がドナー精子を必要としており、提供を行うようになったのだ。

病院はドナーを募る場所として運営しているのではなく、治療するためにあるものである。病院はドナー候補者にマーケティングする能力がないため、数が集まらなかった。

そこで、スコウは、30歳になる前にはじめて自分で集めたドナー精子をこの病院で使ってもらえないかと尋ね、実際にそれを提供すると、すぐ妊娠に繋がった。それを繰り返すうち、他の病院からも依頼が来るようになった。するとデンマーク国内だけだったものが、たちまち海外へも広まっていった。今は100カ国以上へ提供している。

精子の価格は、ドナー情報がどれだけ開示されているかによって変動する。また、精子の運動率によっても価格が変わる。ただし提供者の外見や経歴で値段が変わる料金設定はしていない。消費者は、だいたい50~1500ユーロの中から選ぶようになっている。

クリオスでは、凍結した精子を使用しているが、運動率が高く質の良いものを選んでいるため、人工授精に使用した場合の1回あたり妊娠率は30%を超えていると言われている。

精子バンクが成功した理由

デンマークの精子バンク成功の軌跡

デンマークで、なぜ精子バンクビジネスが成功を収めたのか、そこには試行錯誤を繰り返した歴史がある。

ドナー提供による赤ちゃんが初めてデンマークで生まれたのは1960年代だった。しかし、その時点ではビジネスにするほど法律や環境は整備されていなかった。

国として変わり始めるきっかけとなったのが、1983年にデンマークの合計特殊出生率(1人の女性が一生に産む子供の数の平均を求める数値)が1.38まで落ちたことだった。その数字は2018年の日本の合計特殊出生率1.42よりも低い。

自然に任せて人口を増やすためには、最低でも2より多い数字が必要だ。人々は人口を増やすために、何か動き出さなければいけないと危機感を抱くようになったのだ。

1984年に精子や卵子の提供に関する医師会のガイドラインができ、1997年には法律でドナーの権利(精子を提供しても、親権を持たない権利)が守られるようになった。

法律ができる以前は、子どもが訴えた場合、ドナーが養育費を払わなくてはいけないケースもあった。しかし、法律で守られることで、親としての一切の責任を負う必要がなくなる。

クリオスのドナープログラムが開始したのがちょうど1990年だった。ドナーの権利、そして被提供者の親権が守られることで、さらにビジネスが加速した。

奇しくも、スコウが夢を見て、精子に関する研究を始め、ビジネスを起こそうとしていた時と国民の関心が高まっていた時期が重なり、デンマーク国内でのビジネスが成功に向かっていく。市場のニーズや法規制の変化に応じて、2006年からは匿名ドナーに加えて非匿名ドナーの提供を開始した。今では、レズビアンのカップルやシングルの女性も、提供精子を使った不妊治療を受けることができるようになった。

また、少子化はデンマークだけでなく、日本も含め多くの先進国が抱える問題だ。世界の需要にも応えはじめ、いつしかクリオスは世界最大の精子バンクとなった。現在はドナーの権利がしっかりと守られているデンマークとアメリカから精子を世界中に「販売」している。

少子化に進む日本の方向性

最後に世界最大の精子バンク、クリオスを運営するスコウに、精子ビジネスにおける日本の課題について聞いてみた。すると言下に「法律の欠如」だと言う。

日本では、無精子症の夫婦が病院で精子提供を受けることが認められている。しかし、そうして子どもを持った場合の親子関係を規定する法律は日本には存在しない。また、匿名のドナーからの提供のみが認められているが、ドナー情報の開示を求める声もあがっている。そのため、ドナーとなる男性が少なく、闇ビジネスが横行しやすい。

「きちんとオープンな場でこのテーマを議論することで、国民に情報が共有され、不妊に悩む人々が最適な道を選べるようになる。それが出生率の向上にもつながる。デンマークがそれを証明している」とスコウは語った。

厚生労働省が発表した人口動態統計によると、2018年の日本国内の出生数は91万8397人で過去最低を更新している。合計特殊出生率も3年連続で低下している。

もし、国として少子化に本気で取り組みたいとするなら、「産みたい」と思っている人の負担を少しでも減らすような法整備や環境を整えるのが急務ではないかと感じた。